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blog 歯周病は“静かな病気”。
自覚症状がないまま進行する怖さと最新の検査・治療法とは

2025.08.11

こんにちは。紫波郡矢巾町の歯医者、エストエストデンタルケア院長の大森巧です。
「歯磨きをしたら血がにじむことがあるけど、特に痛みはないから大丈夫かな?」 「歯周病って言葉はよく聞くけど、自分にはまだ関係ないと思っている」
実はそのサイン、放置してしまうと後で後悔することになるかもしれません。なぜなら、歯周病は痛みなどの自覚症状がほとんどないまま静かに進行し、気づいた時には手遅れになっていることも少なくない、非常に怖い「静かな病気(サイレント・ディジーズ)」だからです。
この記事では、皆さまの歯の健康を守るパートナーとして、歯周病の本当の怖さから、その原因、そして当院で受けられる最新の検査・治療法まで、分かりやすく解説していきます。ご自身の歯を一生涯守るために、ぜひ最後までお読みください。

そもそも歯周病とは?気づかないうちに歯を失う「静かな病気」の正体

歯周病とは、一言でいえば「歯を支える土台(歯周組織)が、細菌によって破壊されていく感染症」です。
お口の中には、良い菌も悪い菌も含めて数百種類の細菌が常に存在しています。このバランスが崩れ、歯周病菌が増殖することで、歯ぐきに炎症が起こり、最終的には歯を支えているあごの骨まで溶かしてしまうのです。
歯周病は、進行度によって大きく2つに分けられます。

  • 歯肉炎(しにくえん)
    • 歯周病の初期段階。歯ぐきが赤く腫れたり、歯磨きの時に出血したりします。
    • この段階であれば、丁寧な歯磨きや歯科医院でのクリーニングで健康な状態に戻せる可能性が高いです。
  • 歯周炎(ししゅうえん)
    • 歯肉炎が進行し、炎症が歯を支える骨(歯槽骨)にまで及んだ状態。
    • 歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)が深くなり、骨が溶かされていきます。
    • 進行すると、歯がグラグラしたり、歯ぐきから膿が出たりし、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。

恐ろしいのは、歯がグラグラするなどの自覚症状が出る頃には、すでにかなり進行してしまっているケースが多いことです。だからこそ、歯周病は「静かな病気」と呼ばれ、症状がないうちからの定期的なチェックが何よりも大切なのです。

なぜ歯周病になるの?主な原因とリスクを高める生活習慣

歯周病の直接的な原因は、「プラーク(歯垢)・バイオフィルム(排水溝のヌメヌメみたいなやつ)」です。 プラークは、単なる食べカスではなく、細菌が繁殖して塊になったもの。粘着性が強く、うがいだけでは取れません。このプラーク1mgの中には、なんと1億個以上もの細菌がいると言われています。このプラークを放置すると、唾液中のミネラルと結びついて石のように硬い「歯石」に変化します。歯石の表面はザラザラしているため、さらにプラークが付着しやすくなり、歯周病菌の温床となってしまうのです。
また、日々の歯磨き不足に加えて、以下のような生活習慣も歯周病のリスクを高めることがわかっています。

  • 喫煙: タバコに含まれるニコチンが血流を悪化させ、歯ぐきに必要な酸素や栄養が届きにくくなります。また、歯周病への抵抗力を弱めてしまいます。
  • ストレス: ストレスは体の免疫力を低下させ、歯周病菌と戦う力を弱めてしまいます。
  • 不規則な食生活: 甘いものを頻繁に摂取したり、だらだらと間食したりする習慣は、プラークが作られやすい環境を生み出します。
  • 糖尿病などの全身疾患: 糖尿病と歯周病は相互に悪影響を及ぼすことが知られています。
  • 遺伝的な要因: 生まれつき歯周病にかかりやすい体質の方もいらっしゃいます。

歯周病は口の中だけの問題じゃない?全身の健康を脅かす怖い合併症

「歯周病は、お口の中だけの問題」と思っていませんか?実は、それは大きな間違いです。
深くなった歯周ポケットから歯周病菌が血管内に侵入し、血液に乗って全身をめぐることがあります(歯原性菌血症)。そして、全身の様々な場所で、深刻な病気を引き起こすリスクを高めることが近年の研究で明らかになってきています。

歯周病との関連が指摘される主な全身疾患

  • 糖尿病
  • 心筋梗塞・脳梗塞
  • 誤嚥性(ごえんせい)肺炎
  • 骨粗しょう症
  • 早産・低体重児出産

お口の健康は、全身の健康の入り口です。当院では、歯周病治療を通じてお口の中だけでなく、患者様の全身の健康を守るお手伝いをしたいと考えており、全身への細菌の侵入を防ぐ歯原性菌血症のための治療にも力を入れています。

あなたの歯周病リスクは?エストエストデンタルケアが実施する“歯周病を見える化”する精密検査

「もしかして自分も歯周病かも…」と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれません。歯周病治療で最も大切なのは、まずご自身のお口の状態を正確に知ることです。
当院では、従来のレントゲン検査や歯周ポケットの深さを測る検査に加えて、より科学的な根拠に基づいた精密検査を導入しています。いわば、目には見えない歯周病のリスクを“見える化”する検査です。

1. 位相差(いそうさ)顕微鏡検査

お口の中から採取したプラークを、その場で顕微鏡を使って観察します。ご自身の口の中にいる細菌が、どれくらい活発に動き回っているのかをリアルタイムの映像でご確認いただけます。「こんなに菌がいるの?」と驚かれる方も多いですが、ご自身の目で見ることで、治療へのモチベーションも高まります。

2. 唾液検査(シルハ)

少量の唾液を採取するだけで、「歯の健康」「歯ぐきの健康」「お口の清潔度」など6つの項目を測定し、虫歯や歯周病のリスクをグラフで分かりやすく評価できます。痛みもなく、数分で終わる簡単な検査です。

3. 歯周病悪玉菌遺伝子検査

歯周病を特に悪化させるといわれる“悪玉菌”が5種類存在します。この検査では、どの種類の悪玉菌が、どのくらいお口の中に潜んでいるのかを遺伝子レベルで特定します。敵の正体を正確に知ることで、より効果的で、一人ひとりに合わせたオーダーメイドの治療計画を立てることが可能になります。
これらの精密な検査を行うことで、患者様一人ひとりのリスクを正確に把握し、なぜ歯周病になってしまったのか、これからどうすれば良いのかを、分かりやすくご説明することを大切にしています。

歯周病と診断されたら?保険診療から最新の治療、そして大切なメンテナンスまで

精密検査の結果、歯周病と診断された場合もご安心ください。当院では、患者様のご希望やお口の状態に合わせて、様々な治療法をご提案しています。
基本的な治療は、原因であるプラークや歯石を徹底的に除去する保険診療のクリーニング(スケーリング・ルートプレーニング)が中心となります。
それに加え、より良い治療結果を求める方のために、当院では先進的な治療法も導入しています。

最新のブルーラジカル治療

特殊な光に反応するジェルを歯周ポケットに注入し、特定の波長の光を照射することで、歯周病菌だけを殺菌する治療法です。従来の治療に比べて痛みが少なく、お薬(抗生物質)を使わずに、副作用の心配もほとんどなく行えるのが特徴です。

どの治療法が最適かは、患者様のお口の状態やライフスタイルによって異なります。私たちは、必ず十分な説明を行い、患者様にご納得いただいた上で治療を進めていきます。
そして、治療が終わったら、そこがゴールではありません。 歯周病は、一度良くなっても日々のケアを怠ると非常に再発しやすい病気です。治療によって得られた健康な状態を長く維持していくためには、ご自宅でのセルフケアと、歯科医院での定期的なメンテナンスが両輪となって機能することが不可欠です。
矢巾町の皆さまの「かかりつけ医」として、治療後のメンテナンスまで責任を持ってサポートし、皆さまが一生涯ご自身の歯で美味しく食事できるよう、末永くお付き合いさせていただきたいと願っています。

まとめ

歯周病は、自覚症状がないまま進行し、気づいた時には大切な歯を失いかねない「静かな病気」です。そして、その影響はお口の中だけでなく、全身の健康にも及ぶ可能性があります。
しかし、怖がりすぎる必要はありません。歯周病は、正しい知識を持ち、早期に発見し、適切な治療とメンテナンスを行えば、コントロールすることができる病気です。
歯周病に関する不安や疑問は、どんな些細なことでも専門家である私たちにご相談ください。まずはお気軽に検診にお越しいただき、あなたのお悩みやご希望をじっくりお聞かせいただけませんか?

この記事は、エストエストデンタルケア 院長 大森巧が監修しました。